【レアルとバルサを葬った堅守速攻】カディスの戦術を徹底解剖!

【レアルとバルサを葬った堅守速攻】カディスの戦術を徹底解剖!

2020年12月10日 3 投稿者: マツシタ
Pocket

近年、昇格組のいきなりの躍進がラ・リーガのトピックになる。

16-17シーズンにはアラベスが9位に入って1桁フィニッシュを達成。以後、今シーズンに至るまでラ・リーガに残留し続けている。

17-18シーズンにはヘタフェが8位に入り、続くシーズンには5位に入ってEL出場権を獲得。昨シーズンも8位に入り、今やEL出場権争いの常連としての地位を確立している。

昨シーズンはグラナダが7位に入ってクラブ初のEL出場権を手にしたほか、オサスナも10位に入っている。

さて、今シーズンはどうだろうか。2部を優勝した岡崎のウエスカはここまで苦しんでいる。日本人としてはウエスカに頑張ってほしいところだが、残念ながらここまで最下位に沈んでいる。

一方でウエスカに次いで2位で昇格を果たしたカディスはここまではダークホースとしてリーグを盛り上げている。

15年ぶりとなる1部でここまで5勝3分4敗で5位と大健闘。その5勝の中にはレアルとバルサを敗った試合も含まれる。彼らが今シーズンの昇格組ダークホースのようだ。

Real Madrid vs. Cádiz - Football Match Report - October 17, 2020 - ESPN

第6節には敵地でレアルの完封勝利した。

そんなカディスはどのような戦術をとっているのだろうか。詳しく掘り下げていこうと思う。




基本フォーメーション

ここまでの戦いの中で、軸となっている選手は守護神のレデスマ、左SBのエスピーノ、中盤のヨンソンアレックス・フェルナンデス、崩しの切り札サルビ・サンチェスだ。ここ以外のポジションでは試合ごとに選手が入れ替わっている。

にもかかわらず組織力が落ちないのは特筆に値する。チーム内にしっかりと戦術が浸透していて、誰が出ても自分たちのサッカーができているのだ。

それでは、カディスのサッカーとはいったいどんなものなのか。詳しく見ていこう。




カディスの戦術

 

概要 徹底的な堅守速攻

カディスの戦術をひとことでまとめてしまうと堅守速攻ということになる。

カディスのここまでの平均ボール支配率は驚異の32%。ここまで極端な守備的戦術はなかなか見ない

攻撃を犠牲にして自陣に引きこもっているため、ここまでは12試合で11得点しか奪えていない。それでも順位は5位なのだから、やはりカディスの躍進を支えているのは強固な守備だといえる。

ここまでアトレティコに4点、セビージャに3点取られた以外の10試合では複数失点がない。1点でも取れれば最悪でも引き分けにできるほど守備が計算できる。だから、得点力不足もそこまで問題にはなっていないのだ。

それでは、各局面についてさらに掘り下げてみてみよう。




守備 純粋なゾーンディフェンス。ブロックを組んで待ち構える

カディスの守備時の陣形は4-4-1-1。最終ラインをペナルティエリアあたりに設定し、ここを基準として4-4のブロックを構築して待ち構える。

現代サッカーにおいて最初からペナルティエリアまでDFラインを下げることはなかなかない。極めてリスク回避的だといえる。

この4-4のブロックの前に位置する2トップも自陣に戻って守備に参加することが多い。10人全員が参加する守備ブロックはアトレティコ・マドリードを彷彿とさせ、そう簡単には崩されない。

カディスの守備はゾーンディフェンスで、前線から選手が引いていっても最終ラインの選手がついていくことはない。相手から自由を奪うよりも、自分たちの守備ブロックの維持を優先するのだ。

そんなカディスの守備で特殊な役割を担っているのがサイドハーフだ。

サイドハーフには対面のサイドバックが上がってきたときには定位置を崩してでもついていくことが求められている。つまり、サイドハーフだけはマンマーク的な役割を担っているということだ。

中盤の4のラインを崩してでもサイドバックが外に釣り出されることを避ける。だから、カディスは守備時には図のように6バックのような形になっている場面も多い。

これらのカディスの守備の原則は「中央にスペースを空けることを避ける」とまとめることができる。ゴールに近い場所で選手の密度を高めていれば、そう簡単には点を奪われない。ここにボールが入ってきても、すぐにボールに対してプレッシャーをかけられる。

無理して奪いに行かず、待ち構えることで守備ブロックの中央にボールを誘い込む。そうして入ってきたボールを奪い、カディスは攻撃に転じるのだ。




攻撃 シンプルかつ古典的

続いてはカディスの攻撃について分析しよう。

カディスの攻撃のなかで大きな位置を占めているのがカウンターだ。これについてはトランジションの項で説明しよう。ここではカウンター以外の攻撃についてみていく。

といっても、やることはカウンターと大きく変わらない。カディスの攻撃をひとことでまとめると、ロングボール&サイド突破からのクロスという極めて古典的なものだ。

後方からビルドアップして攻撃を組み立てるような難しいことはしない。そもそもそこまでのタレント力もない。色気は出さず、シンプルに徹している。

攻撃で肝になるポジションがフォワードとサイドハーフだ。

フォワードに求められていることは大きく2つ。ひとつは味方のクリアボールを収めて攻撃の起点となること。これができなければ、カディスはずっと自陣に押し込められることになる。

もうひとつがクロスボールに合わせ、攻撃を完結させることだ。そのため、カディスのFWはいずれも身長180cmを超える屈強な選手がそろっている。

Los problemas crecen en el Cádiz para recibir a la Real

補強の目玉として加わったアルバロ・ネグレドも186cm・84kgの屈強なフォワード。ここまで3ゴール3アシストと全得点の半分に絡む活躍を見せている。

そしてサイドハーフに求められるのが素早く縦に突破してクロスボールを供給することだ。カディスはボールを下げて組み立てなおすことがほとんどない。サイドにボールが渡ったらとにかく縦に仕掛けることを徹底している。

その象徴的な選手がサルビ・サンチェスだ。

Subs Jordán And Munir Seal Late Win For Sevilla - Cadiz 1, Sevilla 3

利き足とは逆のサイドに置かれてカットインしていくサイドプレイヤーが圧倒的多数を占めるようになった中、サルビは右利きの右サイド。いわゆる順足のサイドアタッカーだ。

順足だとクロスを上げるときに有利になる。対峙する相手からすれば遠い足からクロスが上がってくるためカットしづらいのだ。

圧巻のスピードを持つサルビは、素早く縦にえぐってからのクロスボールを最大の武器としている。アルバロ・セルベラ監督にとっては理想的な選手だろう。

Álvaro Cervera no cree en Peter Lim ni "en su modelo actual" - ElDesmarque Valencia

守備時にも特殊な役割を任され、攻撃時には崩しの急先鋒となることを求められる。このサイドハーフがカディスの戦術上のカギなのだ。




トランジション 即縦突破、即撤退

カディスの最大の武器はカウンターアタックだ。よって、ポジティブトランジションでは即座に縦に持ち運ぶ。

ボールを奪ったら、前に残っている2トップのどちらかの足元に当てるか、もしくはサイドハーフを相手DFラインの裏に走らせる。FWにボールが入った時も、結局はそこからの落としを受けた中盤の選手がサイドハーフを裏へ走らせるため、サイドからのカウンターが多くなっている。

右サイドは前述のサルビ・サンチェスが独力で持ち上がっていくことができる。サルビはスピードに関してはラ・リーガでも5本の指に入るだろう。シンプルに速い。このスピードを存分に使って右サイドを突破する。

サイドバックのサポートがなくても単独でサイドを切り裂くことができるため、右のサイドバックには守備的な選手が起用されている。

一方の左サイドハーフは試合によって起用される選手が変わる。これは、いずれの選手も決定打に欠けるともとれる。実際サルビほどの個人での突破力を持っている選手はいない。

そこで重要になってくるのが、サイドバックのアルフォンソ・エスピーノだ。

Mañana nos dan los resultados y si todo va bien el lunes volvemos a entrenar" - 970 Universal

左サイドでは、サイドハーフとサイドバックのふたりの連携によって攻撃を仕掛けることが多い。エスピーノがタイミングよくオーバーラップを仕掛けて攻撃をサポートすることで、素早く数的優位を作るのだ。

ここまでチーム内で唯一全試合で先発起用されていることからも、エスピーノがいかに重要な選手かがわかるはずだ。

右はサルビの個人技、左は2枚の連携。この違いはあれど、最終的にはクロスボールを上げて2トップが詰めるという基本形はかわらない。

特筆すべきは、カウンターにかける人数の多さだ。基本的には自陣に引きこもっているカディスだが、ここぞという場面では一気に3、4人が飛び出すことで迫力ある攻撃ができている。

ここまで12試合で11得点しか奪えていないカディスだが、あとは決めるだけというところまではいけており、速攻の完成度は高い。しっかりチャンスを決めていれば、もっと点が入っていてもおかしくはない。点が入っていないのは、純粋なタレント不足という側面が大きいのだ。

 

一方、ネガティブトランジションでは即時撤退が徹底されている。

現代サッカーにおいて、ボールを失った瞬間に奪い返すためのプレッシングはかなり普及している。しかし、カディスは潔く古典的に戦う。

ボールに近い選手が相手の攻撃スピードを落とさせ、その間に低い位置に4-4-1-1のブロックを整える。そうして、守備の局面に素早く移行するのだ。ここでも、やはり「ゴールに近い場所にスペースを空けることを避ける」という原則が徹底されているといえるだろう。




あとがき

ここまで快進撃を見せ、望外の5位。タレント力で考えればリーガ最低レベルだが、だからこそ難しいことはせずに身の丈に合った戦術を迷いなく実行できている。だからこそ、組織力はリーガでも屈指の完成度なのだ。

当初の目標は残留だっただけに今季は満足感に満ちたシーズンになるに違いない。勢いがどこまで続くかはわからないが、もしこのまま安定した戦い続けてヨーロッパカップ戦の出場権を手にでもすれば歴史に残るシーズンとなるはずだ。

そうして安定した成績を残していき、攻撃に変化をつけられる選手を何人か加えることができればチームとしてもうひとつ上のレベルに行けるだろう。

カディスは次はどのチームを倒して我々を驚かせてくれるだろうか。いまから楽しみだ。

 

 

あわせて読みたい 関連記事

【攻撃サッカーで若手が躍動】レアル・ソシエダの戦術を徹底解剖!

【久保の新天地?】ヘタフェってどんなチーム?久保に求められる役割は?

【堅守速攻のその先へ】アトレティコ・マドリードの戦術を徹底解剖!