【サッカー論】ピッチの分割法 3つのゾーンと5つのレーン

【サッカー論】ピッチの分割法 3つのゾーンと5つのレーン

2020年12月9日 0 投稿者: マツシタ
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サッカーというスポーツはとてもシンプルなスポーツだ。腕以外を使ってゴールを奪い合う。まとめてしまえばそれだけのスポーツだ。だからこそ奥が深い。制約がないからこそ、プレーの手段は無数にあるからだ。

シンプルといえばピッチも同じだ。え?と思った方もいるだろう。サッカーのコートには多くの直線と曲線が描かれている。初心者が見たらとてもシンプルには見えないはずだ。

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しかし、それらのラインひとつひとつの役割を見ていけば、私がサッカーのピッチがシンプルだといっている意味がお分かりいただけるだろう。

フリーキックかPKかどうかの境界線であると同時にゴールキック時の相手の立ち位置を制限するペナルティエリア。

PK時に選手の立ち位置を制限するペナルティアーク。

キックオフ時に両者の立ち位置を規定するハーフウェーラインとセンターアーク。

ボールの置く位置を定めるPKスポットに、コーナーアーク、ゴールエリア。

そう、サッカーのピッチ内に引かれたラインはほぼすべてがセットプレーを補助するためのものなのだ。

だから、通常のプレー時には外枠のライン以外はほとんど無視して考えることができる。すくなくともルール上の役割はほとんどないといっていい。サッカーのピッチはただの四角形同然なのだ。これほどシンプルなものはないだろう。

サッカー選手はこの68×105mのピッチの中で90分間適切なポジションを取らなければならない。だが、ただの四角形の中のどこにでもポジションしていいとなると、どこに立ったらよいかわからないはずだ。

みなさんも「アメリカのどこかに行ってください」と言われたら迷ってしまい、すぐには決められないだろう。そこを「アメリカの西海岸に行ってください」といえばイメージがより明確になるだろうし、「サンフランシスコに行ってください」と言えばすぐにでも飛行機の予約に取り掛かることができるはずだ。どんどん要素を切りかけて、細かくしていくことで物事は明確になっていく。

大きすぎてわからないものを理解するために往々にして用いられるのが、この「切り分ける」という方法である。サッカーというシンプルゆえに難解なスポーツを理解するためには、細かく切り分けていくことが欠かせない。

今回紹介するのは、ピッチの分割法だ。サッカーにおける「西海岸」に当たる目安が、このピッチの分割法である。選手たちはこの目安をもとにサンフランシスコなのかシアトルなのかそれともロサンゼルスなのかを選んでいく。

だからこそ、選手にとってピッチの分割法を知ることは自らのポジショニングの改善につながるだろう。

さらに、チームとしての振る舞いもまたピッチの分割に従って変化する。サッカーを見る者にとっても、ピッチの分割法を知ることはチームの戦術的な狙いをより明確に知る助けになるだろう。

それでは、さっそく見ていこう。

 

 

ヨコの分割 3つのゾーン

サッカーをピッチに分割するとき、最も多く用いられる伝統的なやり方はピッチに横線を入れて3つに区切るやり方だ。ここではそれを3ゾーンと呼ぼう。

自分たちが下から上へ攻撃していると思ってほしい。このとき、最も自分たちのゴールに近いピッチの3分の1をのことをディフェンシブサードもしくはファーストサードと呼ぶ。

かつてはこのゾーンで自分たちがボールを持っているときはできるだけ速くボールを前へ送ることが基本的な考えだった。自分たちのゴールに最も近いこのゾーンでボールを失えば即座に失点する危機を招くということになる。

このリスクを避けるため、できるだけ早くボールを前のゾーンに逃がすことが優先されたのだ。そのためにシンプルにロングボールを蹴り出すことも少なくなかった。

しかし、現代サッカーではこのディフェンシブサードからしっかりとボールをつなぎ、クリーンな形でボールを前進させていくことが優先されている。ビルドアップというやつだ。

前からプレッシングに来る相手を外してきれいな形で味方にボールを届けることができれば、それだけ前方に有利なスペースが広がっていることになる。即失点のリスクを負ってでも、それ以上のリターンを取りに行くということだ。

このビルドアップの局面をいかにデザインするかが、監督の腕の見せ所といってもいいだろう。それくらいにディフェンシブサードからのビルドアップは普及している。

 

続いて、ピッチの真ん中3分の1をミドルサードという。

現代サッカーにおいては、前述のようなディフェンシブサードにおけるビルドアップとそれを妨害しようとするプレッシングの攻防をくぐり抜けると、ミドルサードでボールを受けることになる。

このとき、多くの場合ではできるだけ早くボールを前方のファーストサードへ送る。このゾーンでボールをいくら回したってゴールにはつながらないからだ。だから、現代サッカーにおいてミドルサードにボールがある時間帯は少ないといっていい。

ミドルサードの焦点は、むしろ守備に当たることが多いだろう。相手を押し込んでいるとき、もしくは相手のビルドアップに対してプレッシングを行う時、後ろで攻め残っている選手はいかにミドルサード、そしてその後ろのディフェンシブサードに広がる広大なスペースをカバーするかを考えてポジショニングしなければならない。この守備組織の整備がミドルサードでの焦点となるだろう。

 

そして、最も相手ゴールに近い3分の1をアタッキングサードもしくはファーストサードという。

このゾーンでも焦点はもちろん、いかに相手の守備陣を突破してゴールを奪うかだ。各チームのアタッカーたちがその技を遺憾なく披露する、サッカーのひな壇だといっていいだろう。

加えて、現代サッカーではアタッキングサードでのプレッシングにもスポットライトが当たる。

自分たちがそうでもあるように、相手もまた後方からのビルドアップを試みる。これを途中でカットし、高い位置でボールを奪えれば、ボールを運ぶという行程を省略してすぐさまゴールに迫ることができる。

だからこそ、自陣にスペースを空けてでも、ボールを高い位置から奪いに行くのだ。このプレッシングの仕組みの構築もまた、現代サッカーにおける監督の腕の見せどころなのだ。

 

ここまで見てきた通り、現代サッカーでは後方からいかに攻撃を組み立てていくか、それをプレッシングによってどう妨害していくかという攻防が軸となっている。つまり、ゴールに近い3分の1ディフェンシブサードとアタッキングサードが重要だということだ。

ここでの攻防においてチームがどのような狙いを持ってプレーしているか、そのためにどのようなメカニズムを用いているかを分析することができるようになれば、サッカーを戦術的に見ることができるようになるだろう。

 

 

タテの分割 5レーン

先ほどまで説明したようなピッチを3つに分割する方法は、かなり以前から使われてきたものだ。しかし近年になって新たなピッチの分割法が浸透してきた。それが、ピッチを縦に5分割するというものだ。これを5レーン理論と呼ぶ。

かつてもピッチを縦に分割するという考え方がなかったわけではない。かつてのピッチ分割法では、ピッチをセンターとその両脇を固めるサイドという3つに分割していた。

この方法は極めてシンプルであり、シンプルすぎたために戦術的にそこまで大きな意味を持たなかった。

5レーン理論は以前からあったセンターレーンとアウトサイドレーンの間にハーフスペースという新たなレーンを生み出した。5分割した時の2番目と4番目のレーンである。

このハーフスペースの発見が5レーン理論の唯一最大の発明であった。むしろ、5レーン理論はハーフスペースのための理論だといっていい

なぜ、ハーフスペースはそれほどまでに重要なのだろうか。先に答えを言ってしまうと、ハーフスペースは崩しの拠点として非常に有用なのである。

センターレーンは相手が密集していてプレーするための時間・スペースは極小である。対してアウトサイドレーンだとスペースはある反面、このレーンからゴールを奪うには距離がありすぎる。このふたつのレーンは決定的な場面に発展しにくいレーンだといえる。

それが、ハーフスペースからならゴールまでの距離も近い。さらに、4バックを採用する相手DFにとってみればハーフスペースはCBとSBの担当エリアの中間に位置するため、ここに位置する相手選手を捕まえにくい。守備組織が整備された現代サッカーにおいて、その隙間にあたるハーフスペースが崩しの拠点として機能しているのである。

近年ではこの5つのレーンすべてに選手を配することで4バックの相手に対して数的優位を作って攻撃していくというアプローチが一般化している。これが、5レーン理論を活用した現代サッカーの攻撃の基本なのだ。

5つのレーンすべてに選手を配することで相手DFラインに困難な状況を強いる戦術が現代サッカーでは一般化している。

 

 

あとがき

ピッチの横分割はサッカーの局面分けとも関係してくる。ビルドアップの局面はディフェンシブサードでのボール保持と重なる、崩しからフィニッシュの局面はアタッキングサードでのボール保持と重なる、といった具合だ。

一方、ピッチの縦の分割は従来の3レーンから5レーンに進化し、ハーフスペースを発明し、そこからポジショナルプレーへと発展していく。

ピッチを分けるというシンプルな考え方は、そこからどんどんと発展して専門的な考えとつながっていることがわかるだろう。

ピッチの分割という考え方は、サッカーを戦術的に考えていく上での基礎なのである