【30年ぶりの優勝なるか】ナポリの戦術を徹底解剖!

【30年ぶりの優勝なるか】ナポリの戦術を徹底解剖!

2020年11月22日 10 投稿者: マツシタ
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イタリア南部にあるナポリは人口97万(都市圏では300万!)を擁するイタリア第3の都市だ。

古代ギリシアの時代から南イタリアの中心として栄えた歴史ある都市であり、ヴェスビオ火山や世界遺産である歴史地区があって世界三大美港とも呼ばれる風光明媚な観光都市でもある。同じく火山のすぐそばに位地する鹿児島市とは姉妹都市だ。

ナポリの美しい街並み。

そんな魅力あふれる街に、魅力あふれるサッカークラブがある。SSCナポリだ。

マラドーナが在籍した1986-87、1989-90の2シーズンにわたってスクデットを獲得したものの、その後は低迷。一時は破産宣告によりセリエCへと降格した。

しかし、この時にクラブを買収した現デ・ラウレンティス会長がクラブを立て直して3年でセリエAにたどり着くと、以降は常にCL争いに絡む国内の強豪としての地位をかためた。

直近でも、18-19シーズンまで2位、3位、2位、2位でフィニッシュ。この間チームを率いたサッリが華麗なパスサッカーを完成させ、「欧州で最も美しいサッカー」と呼ばれた。それでいて結果も両立させる理想的な戦いを見せ、絶対王者ユベントスの対抗馬筆頭の地位を確立した感があった。

いよいよユベントスを止めると期待された昨シーズン、チームは予想外の崩壊。クラブ、選手、監督が衝突し、チームは空中分解寸前だった。このどうしようもないように見えた状況を立て直したのが、昨シーズン途中に就任したガットゥーゾ監督だった。

モチベーターよしての手腕を発揮してチームに一体感を取り戻すと、チームは急速に復調してEL出場権に滑り込んだ。さらに、コッパイタリアではユベントスを倒して優勝。崩壊寸前までいったチームに、6年ぶりのタイトルをもたらすまでにチームを立て直した。

そして今シーズン、ナポリは昨シーズン後半の勢いを継続して順調に勝ち星を重ねている。ここまで、5勝1敗1不戦敗で3位。第6節でサッスオーロに敗れたものの、それまでは2位につけていた。




ナポリの戦術

ナポリと言われれば攻撃。パスサッカー。このようなイメージを抱く人が多いのではないだろうか。それだけ、サッリが作り上げた流麗なパスサッカーは印象的だった。昨シーズン途中まで指揮を執ったアンチェロッティもサッリのスタイルを踏襲していた。そのため、つい1年前まではナポリ=パスサッカーというイメージは正しかったといえるだろう。

しかし、サッリ時代から足掛け5年続いてきたパスサッカーは限界を迎え、チームが調子を落とすと内部分裂が発生、崩壊寸前までいったことは前述の通り。

そこへやってきたガットゥーゾは、まず守備組織の構築に着手した。これまでとは打って変わって、緻密な守備ブロックを組むようになったのだ。この守備こそが、今のナポリの強みである

かつては1試合で5点6点取っても驚かなかったナポリだが、昨シーズンのガットゥーゾ就任後は1-1、2-1、2-0といったロースコアをしぶとくモノにしていく試合が増えた。守備の強度が上がった反面、攻撃力については犠牲になった部分があった。

今シーズン、ガットゥーゾはその攻撃力アップに着手している。第2節にジェノアを6-0で一蹴すると、すっかり強豪にのし上がったアタランタも4-1で粉砕するなどすでに効果が出始めている。ガットゥーゾ政権になって構築された堅固な守備に攻撃力が加わってくれば、いよいよナポリは優勝候補だといっていいかもしれない。

では、各局面ごとに詳しく見ていこう。




基本フォーメーション

新加入のバカヨコ、オシメーンが先発に定着した。同じく新加入のぺターニャも途中出場がメインながら出場機会を得ており、ゴールも奪っている。

キャプテンであり崩しの核であるインシーニェが負傷で欠場しており、彼が復帰すればロサーノとポリターノを含めて激しいポジション争いが繰り広げられるだろう。

詳しいメンバーとフォーメーションは下記リンクを参照にしてみてほしい。

【メンバー紹介】SSCナポリの全選手一覧・簡単なプレースタイルの紹介




守備

緻密な守備ブロック

ガットゥーゾが作り上げた守備ブロックは非常に緻密だ。守備時にはトップ下のメルテンスがオシメーンと並ぶような位置に出て4-4-2の陣形をとる。ゾーンディフェンスによって味方との距離感を崩さないことを優先しており、簡単には崩れない。

守備時のナポリの陣形はこのような4-4-2に。メルテンスが前に出てオシメーンとともに1列目を形成する。

メルテンス、オシメーンともに守備ブロックに参加し、10人でしっかりとブロックを組む。おそらくだがアトレティコ・マドリードをモデルにしているのではないだろうか。

守備時の狙いはボールをサイドに追い出すことだ。その狙いはサイドハーフの振る舞いを見ていればよくわかる。相手のサイドに開いた位置にいる選手を受け持つのはサイドバックのヒサイまたはディ・ロレンツォ。彼らが前に出ることで相手を捕まえる。

サイドハーフはあくまでも中央を切ることを優先する。この守備方法によって、相手選手がサイドでボールを持った時に中をサイドハーフが、縦をサイドバックが封じる状態となる。タッチラインを含めて3方向の選択肢を消すようにして挟み込む形となるのだ。ここでボールを奪いきるのが狙いだろう。

サイドハーフは中切を徹底し、サイドバックが前に出てプレッシャーをかける。これによってサイドで数的優位を作り、相手を挟み込むことが可能だ。

追い詰められた相手選手はたいてい空いている後ろにバックパスを戻す。そうなっても、無理して奪いに行かないのがガットゥーゾのナポリ。陣形を維持し、慌てずに待ち構える。

こうした振る舞いができるのは、センターバックのクリバリ&マノラスが対人守備に非常に強いことも影響しているだろう。個人能力に関して言えばセリエA最強のコンビだ。

ちなみに、マノラスの代役としてヨーロッパリーグで出場機会を得るマクシモビッチもレベルが高いセンターバックだ。193cmの長身でフィジカル能力に優れており、彼も対人能力が高い。

中央を封鎖しておけば、相手はサイドからクロスを上げるしかない。しかし、ナポリが誇る2枚の壁がことごとく跳ね返してくれる。相手が後ろからロングボールを放り込んできたときもしかりだ。この中央の堅さ、安定感があるからこそ、しっかり待ち構えることができるのだ。

これまでに見てきた通り、ゾーンディフェンス&リトリート、これがナポリの守備スタイルだ。




守備ブロックにも弱点はあり

非常に整備されているナポリの守備ブロックだが、時折顔を見せる弱点もなくはない。それが、DFラインとMFラインの間のスペースだ。

ナポリのDFラインは相手がロングボールを蹴りそうな場面ではまめにDFラインを下げる。問題はこの動きにMFラインが連動していないことだ。このことによって、下の画像のようにライン間にスペースが空いてしまう。ここにずばっとくさびが通った時にピンチに陥る場面があるのだ。

ボランチのうち「守備の人」バカヨコは、ボール奪取力に関してはファビーニョにも並ぶ達人級の実力の持ち主だ。しかし、バカヨコにはファビーニョほどのスピードがない。それゆえ、自分の背後をとられてしまうとそこから追いついてボールを奪うことができないのだ。スピードがないのは相棒のファビアンも同じである。

ここまでのところ、クリバリ&マノラスの最強コンビが個人能力の高さで何とかしているものの、セリエA最強クラスのタレント(たとえばイブラヒモビッチやロナウド)がこのスペースをうまく活用してきたようなときにこの弱点が露見する可能性はあると思う。




プレッシング時に見え隠れする問題点

ブロック守備の局面では非常に整備されているナポリだが、前からのプレッシングの局面ではまだ整っていない部分が見える。それが、前線の選手と後方の選手の連携面だ。

ナポリはサッリ時代、アンチェロッティ時代とボールを失った場面では高い位置からチームを押し上げてのプレッシングを軸に据えてきた。メルテンスやインシーニェなど、この時代からクラブに在籍する選手はいまだ多く、その時の感覚がまだ抜けきっていないのだろう。前線の選手が個人の判断で高い位置からプレスをかけに行く場面がしばしばみられる。

しかしながら、これに後ろの選手が連動できず、プレスが空回りしてしまう場面は少なくない。ここは、チームとしての対応をはっきりさせた方がいいだろう。

前から行くのならチーム全体で連動して奪いに行くべきだ。そうでなければ前線の選手に我慢させ、ブロックの維持に努めさせるべきだろう。そうでなければ、無駄走りが増えてしまい、体力が無駄に消費されてしまう。




攻撃

縦へ早くという選択肢が加わった

サッリ時代の影響もあり、ここしばらくナポリといえばショートパスを駆使した流麗な崩しが攻撃パターンとして浸透していたそれどころか、そのスタイルがチームの代名詞でもあった。しかし、ガットゥーゾはここにメスを入れている。

昨シーズン、ガットゥーゾは就任してすぐにしっかり引いて守備ブロックを形成することをチームに植え付けた。そして、リトリートを採用したことで攻撃は自然と速攻がメインになっていった。今シーズンも速攻はチームの攻撃の大きな選択肢になっている

だが、同時に今シーズンはゆったりとパスを回してゲームを組み立てるスタイルの「復興」にも取り組んでいるようだ。今のところ、相手に応じて攻撃のスタイルを柔軟に使い分けているように見える。

スタイル選択は相手が得意とするものに合わせているように見える。相手が速攻が得意ならナポリも速攻がメイン、相手が遅攻がメインならナポリも遅攻を狙う。アタランタ戦では鋭いカウンターで前半だけで4得点を奪っている。一方、ポゼッションサッカーが浸透したレアル・ソシエダとの一戦では、ボールを奪ったらこちらもポゼッションの確立を優先し、試合のリズムを落とした中で戦って1-0での勝利を得た。

これまでのところ、速攻を採用したほうが爆発的な得点力が生きる印象だ。第2節ジェノア戦では速攻が面白いように決まって6-0の勝利を手にしている。

一方、ナポリも相手も遅攻を採用すれば試合のテンポは落ちてロースコアになりやすい。ソシエダ戦もボローニャ戦もウノゼロ勝利だ。イタリアらしい戦いぶりだといえる。サッリ時代からは考えられないだろう。

速攻と遅攻の両方ができるナポリは、CL3連覇を達成した時のレアル・マドリードのような「強者のサッカー」をするようになってきているといえる。セリエの絶対強者、ユベントスもこのようなスタイルが得意なのだ。どんな試合展開からでも勝ち星を拾えるようになってくれば、ナポリが黄金期を迎える可能性も十分に考えられる。




ビルドアップはファビアンが中心

遅攻を採用するときは、低い位置から丁寧につないでいく。基本的にはあまりロングボールは蹴らない。唯一ロングボールを使ってチームのリズムを変える役割を許されているのは中盤に君臨するファビアン・ルイスだ。

ファビアンは少ないタッチでボールを循環させるため、あまり目立った存在ではない。しかし、彼がボールを触ることでチームにリズムが生まれる。センターバックのマノラスとクリバリ、そしてボランチでコンビを組むバカヨコは組み立て能力に秀でたタイプではない。そのため、ファビアンにかかる期待は大きいのだ。

開幕当初にファビアンとコンビを組んだのはジエリンスキだった。しかし、彼の負傷をきっかけに新加入のバカヨコがここに定着した。

技術面ではバカヨコよりも優れるものの、ジエリンスキはより攻撃的だ。彼と組んだ試合では、ファビアンは攻め上がりを自重していた。そこが、守備能力に秀でたバカヨコに変わったことで、自由に動き回りながらボールに絡んでチームにリズムを生み出すファビアン本来の持ち味が発揮されるようになった印象だ。バカヨコの定着によって中盤の守備力も向上したといえる。

逆に言えばバカヨコはジエリンスキを比べると攻撃性能で明らかに見劣りするため、ファビアンへの依存度が高くなったともいえる。事実、ファビアンを封じられると途端にビルドアップのスムーズさが失われてしまう印象だ。

ナポリは基本的に片側のサイド(特に左サイド)から組み立てていこうとする。これが詰まった時にサイドを変えるのがファビアンが担っている役割だ。ここが消されてしまうと、ナポリは片側のサイドに追い詰められた状態になってしまうというわけだ。

ビルドアップ・崩しの局面において、ファビアンは欠かせない存在なのだ。




引いた相手をいかに崩すかが課題に

攻撃面の課題は、引いた相手をいかに崩すかという部分になってくるだろう。

前述のように、カウンターの破壊力は抜群で速攻を軸に据えた場合は大量得点しているナポリ。しかしながら、遅攻を採用したときにはその爆発力は鳴りを潜めてしまう。

ソシエダ戦、ボローニャ戦はウノゼロ勝利、べネベントには2-1の逆転勝ち。今期躍進するサッスオーロからは得点を奪うことができず、0-2で敗れている。このように、拮抗した試合が多くなっているのだ。

ここ数試合のナポリはあまり点を奪えていないが、守備が安定しているので1点でも奪いさえすればそのまま守り切れてしまうような安心感はある。本当にイタリアらしいチームだ。

とはいえ、ナポリがさらにワンランク上のチームを目指すなら、崩した相手を崩すようなプレーを磨き上げていくことが必要だろう。事実、サッリ時代にはそれが代名詞だったのだ。やってできないことはないだろう。

個人的にカギを握ると考えるのがメルテンス。もともとウインガーだったが、サッリによって9番の位置にコンバートされるとゴールゲッターとして覚醒。ここ4シーズンでは70ゴール以上を奪っている。

そんなメルテンスはここまでわずか2得点。その非凡な得点力が十分に生かされているとはいいがたい。彼の得点力を生かせる形を構築できれば、さらに得点数が伸びていくのではないだろうか。

ここまでは効果的な崩しのパターンを構築できていないガットゥーゾ。サイドハーフにボールが入った時に必ずサイドバックがサポートするという決め事はありそうだが、サイドハーフとサイドバックが連携で崩すような形は確立できていないのが現状だ。効果的に得点に至る形を整備してやれるかどうかはガットゥーゾの監督としての力量の限界を測るうえでも注目だ。




トランジション

ネガティブトランジション時は無理のない範囲でのプレッシング

ネガティブトランジション時、前線の選手たちはすぐさま奪い返そうとプレッシングに出る場面も見られる。しかし、あくまでも個人的な判断という印象は否めず、後ろの選手と意図があっていない場面が多いことは守備の局面で述べた通りだ。

現状は無理のないプレッシングといった印象で、チームの基本姿勢はリトリートだ。プレッシングをかけても安全な相手にボールが下げられた場合には、前線の選手も無理して追わずに守備の局面へ移行することが多い。

 

ポジティブトランジション時はオシメーンを軸にカウンター

ポジティブトランジション時には縦に速く仕掛ける。これは、ガットゥーゾ就任後の一貫した狙いだ。

この速攻の破壊力を上げるために、クラブ最高額を大幅に更新する8000万€を支払ってまでオシメーンを獲得したのだろう。しなやかな体を生かしたボールキープと伸びがあるストライドを生かしたスピードで一人で攻撃を完結してしまえる戦術兵器だ。

このオシメーンを急先鋒に、カジェホンの後釜に収まったロサーノに限られた出場機会で結果を残すポリターノなどスピード豊かなサイドアタッカーが続く。彼ら快速アタッカーが次々と飛び出すカウンターアタックは破壊力抜群で、現陣容のアタッカーの特徴にもあっているように感じる。

ただ、現在のナポリは対戦対手に応じてじっくりとした組み立てからの攻撃を目指すことも多いことはこれまでに説明した通り。そのため、ポジティブトランジション時にボール保持の確立を優先する試合も多い。

個人的には、もう少し縦に速いカウンターを増やしてみれば得点が増えるように感じるのだが、ガットゥーゾは今後どのように調整してくるだろうか。

 




 

あとがき

ナポリは現在セリエAで3位につけている。ユベントス戦が通常通り開催されていれば、いま首位に立ってたかもしれない。

いずれにせよ、マラドーナ在籍時以来の優勝を狙える好スタートを切ったことは事実だ。速攻もできれば遅攻もできる、ユニバーサルなチームへと向かうナポリ。そのベースには、強固な守備組織がある。

「イタリアらしく」なって華麗な復活を遂げたナポリは、シーズン終了後にスクデットを掲げることができるだろうか。注目してみていきたい。

 

 

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