【『観光ブランドの教科書』】人をひきつける地域ブランドの作り方

【『観光ブランドの教科書』】人をひきつける地域ブランドの作り方

2020年11月18日 1 投稿者: マツシタ
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東京一極集中が進む日本において、地方創生が課題だと言われて久しい。

幸いなことに、コロナ禍においてリモートワークが広がったため場所に縛られずに仕事をすることができるようになってきた。その結果、地方へ移住しようと考えている人も少しずつ増えてきているようだ。

スマートアイデア株式会社の「住宅ローンに関するアンケート調査」によると、東京都に住む人のうち19.6%が他県への移住を検討しているという。(https://news.mynavi.jp/article/20200924-1333742/)

それでは、移住先の地方をどのようにして選ぶのだろうか。おそらく、訪れたことのある地域の中から魅力的な場所を選ぶのではないだろうか。気に入った地域を何度も訪れていたら、結局移住してしまったなんてことも多いと思う。となると、やはり外から人を呼び込まなければならない。

人を呼び込むためには、地域として外にアピールする力が必要だ。いわゆる「地域ブランド」である。多くの人はブランド力のある地域に引き付けられ、訪問を検討する。だから、地域にブランド力がなければ人に来てもらうことはできない。

そこで、今回は『観光ブランドの教科書』を参考に、地域ブランドの作り方について考えてみたいと思う。

 




 

地域に求められるのは「引力」である

地域をひとつの商品だと考えたとき、この商品にはひとつ困った特徴がある。移動させられないことだ。宮崎県で作られたマンゴーを東京へ輸送して販売することはできるが、宮崎県自体を東京湾へ移動させることはできないのだ。

自分からお客さんのもとへ出向くことができないのならば、お客さんに自ら来てもらうしかない。そして、来てもらうためには引き付けるしかない。この観光客をひきつける魅力を「地域引力」という。引力がなければ、地域に人は来てくれない。

地域引力は押す力ではなく引く力であるというところがポイントだ。誘致やセールスは押す力である。売り手側から「ぜひ来てください」と押していく。一方、地域引力は客側が「ぜひ行きたい」と思うことだ。自発的に行きたいと思うということだ。これを生み出すことが、地域に人を呼び込む秘訣である。

ここでひとつ、注意しなくてはならないことがある。地域引力は知名度とイコールではないということだ。

例を挙げよう。埼玉県という地名を知らない人は、ほとんどいないだろう。しかし、埼玉県と言われて明確なイメージが湧くだろうか。多くの人は湧かないのではないか。埼玉県は知名度がある「地名」ではあるが、地域引力を持った「ブランド」ではないのだ。

 




 

求められる「象徴」

埼玉県の例からわかるように、地域引力を生み出すためには具体的なイメージが重要だ。ただ「美しい」と言われても、具体的なイメージは湧かないだろう。「私たちの地域は美しいです!」と言われても、行きたいとは思わないはずだ。街並みが美しいのか、山が美しいのか、夕日が美しいのかはわからない。

それが、沖縄で美しいといわれれば誰もが海だとわかるだろう。京都で美しいといわれれば、誰もが街並みだとわかるはずだ。これが、ブランドである。「〇〇といえば△△だよね」といえるようなイメージが具体的に湧くこと、これがブランドだ

そういった意味で、シンボルの存在は、地域のイメージ形成を助けてくれるはずだ。エッフェル塔と言われれば、世界中の人がパリだとわかる。自由の女神といえば、世界中の人がニューヨークだとわかる。こうしたシンボルの存在は地域引力の形成に貢献しているのだ。

 




 

たくさん伝えたいなら2段階訴求が効果的

もちろん、自分の地域にはいくつもの魅力があるという方は多いだろう。でも、いきなり「うちの魅力は食べ物と海と山と川と町です!」とアピールしてもたくさんの人をひきつけることはできないだろう。どんな場所なのかイメージがわかないからだ。

それならば2段階訴求にすればいい。

まず、最もわかりやすいシンボルを使って引きつける。シンボルがあれば、それを目当てにやってくる人がいる。そして、きてくれた人に対して「実はそれだけじゃありません」と畳みかけるのだ。

香川県なら、まずうどんでひきつけておいて「実は日本のウユニ塩湖があるんです!」「小豆島はこんなに魅力的なんです!」と畳みかけるわけだ。

最初から「うどんとウユニ塩湖とエンジェルロードとこんぴらさんがあります!」と言われても何のことだかわからない。入口はシンプルな方がいい。

いきなりすべてが見えているより、途中から次々と見えてくる方が驚きの感情が生まれ、魅力度はより増していくだろう。

 




 

人々は体験を求めている

そしてひとつ、近年の観光について押さえておきたいポイントがある。観光は「見る観光」から「感じる観光」にシフトしているということだ。

視覚だけに訴える「見る観光」は、一度見たらもういいやと思われやすい。今度は別の場所に行こうと思われやすいのだ。

対して、「感じる観光」は一回きりでもういいやとは思われない。おいしい食べ物はもう食べたからいいやとはならないはずだ。また食べたいと思うはずなのだ。気持ちのいいマッサージは、もう来なくていいやとはならないはずだ。また体験したいと思うはずなのだ。

だから、魅力的な視覚資産を持っている地域でも、そこにいかに体験価値を加えられるかが求められている。素晴らしい自然でも、再訪問につながるかどうかはその人次第になってしまう。自然×アクティビティなのか、自然のなかでの癒しなのか。何らかの体験価値が求められているということは、押さえておきたいところだ。

 




 

今回の参考図書

最後に、今回の参考図書を紹介しよう。

今回参考にしたのは岩崎邦彦氏の著書『観光ブランドの教科書』(日本経済新聞出版社)だ。

本書は地域ブランドとは何かに始まり、地域ブランドの作り方、さらには観光という産業全体の目指すべき方向性までを述べた、まさに「観光の教科書」ともいうべき本だ。日本観光研究学会の「学会賞」を受賞していることを見れば、その内容がいかに優れているかがお分かりいただけるだろう。

地域に人を呼び込みたい方なら必読書だといえると思う。かなり具体的にかつ分かりやすく地域に人を呼び込むための考え方や手段がまとめられている。

また、ブランドを生み出し人気を得たい人ならば、分野が違っても大いに参考になるはずである。

今回紹介できたのは、本書のほんの一部に過ぎない。人気のあるブランドを生みたい方にはぜひとも実際に手を取って目を通してもらいたい一冊だ。

 




 

あとがき

現在、政府主導でGoToトラベルが実施されており、地域を訪れる人の数は着実に増えている。いままさに地域に活力を取り戻すチャンスが到来していると思う。

たくさんの人が来てくれるからこそ、ひとりひとりの観光客に地域の魅力をアピールしてファンを拡大できれば、地域に関わってくれる人の数が増えていくだろう。

地方にとって、いままさに求められているブランド力。これを手に入れられるかどうかにその地域の存亡がかかっているといっても過言ではないだろう。

 

 

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