【サッカーの教科書シリーズ】サッカーの4局面とは?

【サッカーの教科書シリーズ】サッカーの4局面とは?

2020年11月1日 0 投稿者: マツシタ
Pocket

サッカーとは何か?極めてシンプルな問いだ。同時に、極めて難しい。

サッカーは非常に奥深いスポーツで、私ももう十数年間サッカーと関わっているが、いまだに新たな発見が絶えない。

難しいルールといえばオフサイドくらいなもので、腕以外はどこを使ってもいい。バレーボールのように25点取らなければ終わらないようなスポーツとは違い、1-0でも8-0と同じ勝ちだ。開始1分で1点取って残り時間守り倒してもよし、攻め続けて相手を完膚なきまでに叩き潰すもよし。

ほかのスポーツと比べると、サッカーはルールによる制約が極めて少ない。それゆえに、各選手が取れるプレー選択の幅や、チームとして勝利のために取る戦術の幅がとても広い。ルールはシンプル、中身は複雑というスポーツだ。だからこそ、「サッカー」を一言で表すのは難しい。

そんなシンプルかつ難解な「サッカー」を理解するためには、モノサシを当ててそれを基準に見ていくのがいいだろう。難しい概念を理解するときは、いつだって切り分けて考えてみるのが常套手段だ。

今回のモノサシは「プレーの局面」だ。このモノサシを当てると、サッカーはどのように切り分けられるだろうか。今回はサッカーの4つの局面についてみていこうと思う。

 

 

ふたつの局面+α

サッカーをプレーの局面というモノサシから見てみると、大きくふたつの局面に切り分けられる。自分たちがボールを持っている局面ボールを持っていない局面だ。これをそれぞれボール保持ボール非保持ということにしよう。

ボール保持の局面では、多くの場合自チームは攻撃しているということになる。逆に、ボール非保持の局面は守備の局面と重なることになる。一方が攻めているとき、もう片方は守備をする。そして、攻めている側にボールがあり、守る側はボールを奪おうとする。ほぼすべての球技に共通する原理原則だ。

しかし、サッカーにおいて攻撃と守備は完全に分かれているわけではない。どちらかのチームがボールを奪ったとき、即座に攻撃チームと守備チームが入れ替わる。この攻守の切り替えの連続によって試合は構成されている。

とはいえ、サッカーにおいて攻撃と守備の局面はぶつ切りになっているわけではない。それらは「攻撃から守備への切り替え」という局面と「守備から攻撃への切り替え」という局面によってつながれていて、はっきりとした境界線がない。まるでグラデーションのように。

近年、サッカー界ではこの攻守の切り替わりの局面への注目度が高まっているのだ。

これら攻守の間に存在する局面トランジションと呼ぶ。そして、守から攻への切り替わりの局面を特にポジティブトランジション攻から守への切り替わりの局面を特にネガティブトランジションという。

サッカーでは攻撃と守備がトランジションの局面によってつながれ、連続している。それぞれの局面はグラデーションとなっていて、はっきりと分けることが難しい。実際、どこまでをトランジションの局面とするか、何をもって攻撃の局面とするかはチームや識者によって変わってくるのだ。これをまとめると、下の画像の通りだ。

『footballista』より引用。

 

 

トランジションこそがサッカーを特徴づける局面

私は、このトランジションという局面こそがサッカーを特徴づけると考えている。サッカー以外のスポーツでは、このトランジションという局面を重視しないことが多いのだ。

そもそも、野球にはトランジションという局面は存在しない。攻撃チームが3アウトするまで、守備チームはずっと守備をし続ける。攻撃回と守備回の切り替えの時にいきなり盗塁をし始める人などいない。

バレーボールやテニス、バドミントンなどのようにネットによってコートが仕切られているスポーツでもそうだ。ボールが敵側にあるのに、ネットを飛び越えてスマッシュを決めに行くことはできない。切り替わりのテンポが速いとはいえ、攻守ははっきりと分かれている。

それでは、バスケットボールやハンドボールなどはどうだろうか。これらのスポーツもサッカー同様にピッチが仕切られておらず、制限時間内で攻撃と守備が連続するスポーツだ。しかし、これらのスポーツを見ているとトランジション時の振る舞いはサッカーのそれとは大きく異なる。

特に異なるのがネガティブトランジション時の振る舞いで、これらのスポーツでは即時撤退の一択である。手でボールを扱うスポーツでは、サッカーよりもミスが起こりにくいし、守備者の頭の上を超えるパスが出しやすい。だからサッカーのようにボールを失った瞬間に激しくプレッシャーをかけてもかわされてしまうことが多いのだ。だから無理して奪いに行ってがらあきの自陣を攻められるくらいなら、すぐに撤退してしっかり守備陣形を整えようとするのだ。

対して、サッカーではトランジションの局面の重要度がどんどん高まっている。ボールを失うとすぐにネガティブトランジションの局面に移行し、ボールを奪いに行く。即時奪回を目指した守備の設計をしていないチームなど、もはやほとんど存在していない。

攻守の局面だけを見ていてもサッカーは理解できない。このトランジションという局面を意識することで、よりサッカーを理解することができるようになるだろう。

 

 

あとがき

このように、サッカーというスポーツは攻撃と守備という局面がはっきりと分かれているスポーツとは大きく異なる。それぞれの局面はグラデーションのようにつながっており、攻撃→ネガティブトランジション→守備→ポジティブトランジションという順に4つの局面をぐるぐると循環しながら試合が進んでいく

この4つの局面でどのようにふるまうのかという点に着目すれば、それぞれのチームの狙いがはっきりと見えてくるだろう。