
【献身的な王様】ズラタン・イブラヒモビッチのプレースタイルを徹底解剖!
ミランが好調だ。セリエA開幕から4連勝を達成。その後はローマと引き分けたものの、4勝1分けで負けなしで首位に付けている。この負けなし記録は昨シーズンを含めると22試合を数える。リーグの中断明けから半年近く負けなしを継続している。いよいよ名門復活の兆しが強まっているのだ。
そのミランの中心がレジェンド、ズラタン・イブラヒモビッチだ。
昨シーズンの冬の移籍市場で7年ぶりに古巣に復帰すると、瞬く間に最前線に君臨。18試合で10ゴール5アシストと圧巻のパフォーマンスを見せた。
今シーズンも好調をキープし、3試合連続のドッピエッタを達成。ここまで得点ランキングのトップを走る。39歳になった今もなお、決定力に陰りは全く見られない。
老いてなお盛んなイブラはどのようなプレーを見せているのだろうか。今回は好調ミランのキング、ズラタン・イブラヒモビッチのプレースタイルについて掘り下げていきたい。
ゴール前での勝負強さ
39歳となった今も得点を量産するイブラヒモビッチ。当然、全盛期と比べればスピードは落ちている。しかし、その分だけ瞬間的な駆け引きは研ぎ澄まされているという印象だ。
サイドにボールがあるとき、イブラはたいていフォアサイドに陣取っている。
自分のマークが自分よりも外側にいるとき、守る側はボールと相手を同一視野にとらえることができない(下画像参照)。これを利用し、イブラは相手が自分から視線を切った瞬間に動き出し、まんまとフリーで流し込むのだ。

相手の後ろからファーサイドに走りこんでクロスに合わせるのがお決まりのパターン。
ミランのサイドアタッカーたちは基本的にはグラウンダーのクロスをイブラに送り込む。このクロスをダイレクトで流し込むのがイブラお決まりの得点パターンとなっている。
195cm・95kgの屈強なフィジカルを誇るイブラは、ハイクロスでも難なくゴールに結びつけられる。空中戦はほぼ敵なし状態で、開幕戦ではヘディングで得点を奪っている。
さらに、勝負強さという面ではPKの成功率の高さにも触れないわけにはいかない。ここまで挙げた6得点のうち2つはPKから奪ったものだ。駆け引きの巧みさはさすがといったところだ。

ここまででPKの流れから2つのゴールを奪っている。
低い位置からのゲームメイク、チャンスメイク
圧倒的な得点力で攻撃陣を引っ張るイブラだが、彼の仕事場はゴール前だけにとどまらない。イブラは低い位置へ引いたり、サイドに流れたりと非常に広範囲を動き回る。
下の画像はミラノダービーでイブラがボールに触ったエリアを示したヒートマップだ。いかに広範囲に動き回っているかがわかるだろう。
イブラは195センチの長身としては極めてテクニックレベルが高い。ドリブル、パス、すべてが一級品だ。
引いてボールを受けたイブラは前を向いてパスを散らし、攻撃を方向付ける。よりゴールに近い位置でボールを受けたときは、決定的なスルーパスを供給してチャンスを作り出す。前を向けば何でもできるのがイブラだ。
昨シーズンの5アシストという数字が彼がいかに味方を引き立てているのかを物語っている。自分で得点をとるだけでなく、司令塔としてアタッカーたちを操っているのだ。
いわばストライカーと司令塔の一人二役である。イブラはミランの攻撃の全権を握っているのだ。
オレ様キャラだがプレーは献身的
イブラヒモビッチは自分が輝くことだけを考えているプレイヤーではないというのはここまで見てきた通り。そして、それは攻撃だけでなく守備でも言える。
オレ様キャラが浸透しているためイブラは守備をしないと思っている人が多いようだ。とんでもない。イブラは非常に献身的に守備をする選手だ。
たしかに自分から遠いところでボールロストした時には怒ったり歩いていたりする。だが、自分の担当エリアでボールが相手に渡った時には、即座に切り替えてボールを奪いに行く。この切り替えの早さはベテランのそれとは思えない。
ブロック守備へ移行した場合も、ブロックの構成員の一人としてしっかりプレッシングに参加する。CBからGKへのバックパスに合わせてGKにまでプレッシングすることは決して珍しくない。GKがパスを散らせば、さらに2度追いすることだって厭わない。
イブラがオレ様なのはあくまでピッチ外のキャラ。プレー面ではチームのために身を粉にすることができるプレイヤーなのだ。
チームの精神的支柱
サッカー界に名を残すようなレジェンドが、39歳になった今もなお献身的に守備に参加する。これをみた若手の選手たちは守備に走らざるを得ないだろう。
イブラは練習から一切手を抜かないプロフェッショナルとしても知られている。ベテランになっても謙虚に練習に励む姿を見せることでもまたチームのお手本となっている。若手中心のミランにとっては余計に影響が大きいだろう。
イブラの獲得は若手重視の路線に反するとして批判の声も多かった。だが、そんな声を結果で黙らせてしまうあたりはさすがだし、イブラらしい。結果としてむしろ若手の成長を促してさえいる。イブラのサッカーに取り組む姿勢がチーム全体に伝播し、チーム全体が成長しているのである。
ミランの精神的支柱としても君臨するイブラ。今のミランは彼のサッカーに対する真摯な姿勢を尊敬する若手がイブラのもとにまとまり、非常に団結している。
このカリスマ性もまた、唯一無二のイブラの武器なのである。

今のミランはイブラを中心に非常に団結している。ここまで結束力を感じるミランはいつぶりだろうか。
あとがき
ビッグマウス男としても有名なイブラヒモビッチ。彼のインタビューは毎回楽しませてくれる。
昨シーズンの第31節、王者ユベントスに対し0-2から4得点を奪っての大逆転勝利を飾った試合後にイブラはこう言った。
「オレはミランの会長であり、選手であり、監督さ。給料は選手の分しかもらってないけどな(笑)」
ミランにとってイブラとはどういう存在であるかを端的に言い表した言葉だろう。イブラは絶対なのだ。
そして、このインタビューには続きがある。
「オレがシーズンの最初からいればミランはスクデットをとれたのにな。」
なかなかのビッグマウスだ。当時は、そう思ったはずだ。
だが、今のミランを見てからこの言葉を聞くとどうだろう。リアリティが感じられるのだ。
彼の言葉通り、今シーズンはミランがスクデットに返り咲くのか。そうなれば、イブラヒモビッチはクラブのレジェンドとして永遠に歴史に刻まれることになるだろう。
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