
【コロンビアの貴公子、エバートンで復活】ハメス・ロドリゲスのプレースタイルを徹底解剖!
ハメス・ロドリゲスが完全復活を果たしている。
レアル・マドリードから恩師アンチェロッティ率いるエバートンのもとへと馳せ参じたハメスは瞬く間にエバートンの攻撃の中心となって躍動。ハメスが輝きを増すと同時にチームの調子も上向いて現在プレミアリーグでトップに立っているのだ。
それはまるで、ハメスの輝きとともに躍進したブラジルワールドカップでのコロンビア代表を見ているかのようだ。ハメスの名を世界にとどろかせるきっかけとなったあの頃のハメスが戻ってきつつある。
そんなハメスはどのような選手なのか。彼のこれまでのプロキャリアでの紆余曲折とともに、プレースタイルについて徹底的に解剖していこうと思う。

目次
ハメス・ロドリゲスの物語
ブラジルワールドカップまでは順調に
ハメスはコロンビア2部のエンビガドというクラブでデビューすると、2年後にアルゼンチンのバンフィールドに移籍。1シーズン目に17歳で記録した初ゴールは、外国籍選手の最年少得点記録だ。
続く2シーズン目では18歳ながらレギュラーとして活躍。チームの歴史上初めてとなるアルゼンチン1部リーグ優勝に貢献した。

この活躍が認められて育成の名門として知られるポルトガルのポルトに移籍。3シーズンにわたって活躍するとともに自身もさらにひと回り成長した。
この3シーズンで25ゴール26アシストを記録。チームはリーグ3連覇を達成し、ハメスはコロンビア人選手としては初めての最優秀若手選手に輝くなど華々しい3年間となった。

当然ビッグクラブからも注目の的となり、マンUなど名だたる強豪への移籍がうわさされた中で、ハメスはモナコへの移籍を選択して周囲を驚かせた。
そのシーズンでは9ゴール13アシストを記録。金目当てだなどともいわれたが、懐疑論を自らのプレーで黙らせた。

この絶好調をそのまま持ち込んで臨んだのが、あのブラジルワールドカップだった。
日本人サポーターとしては後半途中から出てきて2ゴールを奪われた衝撃は忘れられない。そして、あのウルグアイ戦でのビューティフルゴールだ。伝説級の一撃を叩きこんでその名を世界に知らしめ、大会得点王に輝いた。

そしてワールドカップの興奮も冷めやらぬ間に、次のシーズンはレアル・マドリードでプレーすることが発表される。
ここまでは出来すぎなくらい順調なキャリアだった。移籍が発表されたとき、誰しもがハメスはレアルで一時代を築き上げると、そう思ったはずだった。しかし、ここから思いもよらない展開が待ち受けていたのだった。
レアル・マドリード移籍を境にキャリアが暗転
レアル・マドリードに移籍したハメスを待っていたのは、世界最高の仲間たちだった。そして彼らは同時に、世界最強のライバルだった。
この当時はBBC(ベンゼマ、米ル、クリスティアーノ・ロナウドの頭文字をとったもの)の全盛期で、ハメスが得意とするサイドは埋まっていた。
そして彼らBBCは守備をあまりこなさなかったため、中盤の選手には守備力が必要とされた。カゼミーロが台頭し始めたのもこの時期だった。
かくして、分厚い選手層に阻まれたハメスは、思うように出場機会を得ることができなかった。
最初のシーズンこそ13ゴール13アシストを記録するものの、終盤戦に中足骨を骨折して長期離脱してしまう。これを境にして、ゴールに絡む数字と出場試合数はシーズンを重ねるごとに減っていった。

加入から3シーズンを経て、キャリアを立て直そうとバイエルンへ移籍する。しかしながら、ドイツの地でも輝きを取り戻すまでには至らなかった。細かいケガもたたって出場試合数自体はレアルでの3シーズン目よりも減ってしまっていた。

結局レンタル契約が終了するタイミングでバイエルンは買取オプションを行使せず、レアルに戻ることに。ナポリやアトレティコへの移籍などもうわさされたが結局残留することになる。
このシーズン、つまりは昨シーズンはハメスのキャリアの中で最悪のシーズンだった。リーグ戦での出場はわずか8。ジダン監督との関係性は改善されず、シーズン終盤戦は完全な構想外となってしまったのだ。

失意の1年を経て、この9月にエバートンへの移籍が発表される。「都落ち」だと、だれもが思った。ここからハメスの逆襲が始まるとは、だれも予想していなかったのだ。

ハメス・ロドリゲスのプレースタイル
最大の武器は繊細な左足のキック
エバートンにやってきたハメスは自分の武器を存分に見せつけている。その武器とは、左足から繰り出す高精度のキックだ。
エバートンでは右サイドに置かれるハメスは左足にボールを置きながらカットインしていき、そこから得意の左足で局面を打開する。
近くによって北見方との連携を見せたかと思えば、動き出した味方に高精度のスルーパスを供給して決定機を演出。ふわっとした柔らかいクロスを見せたと思えば、強烈なミドルシュートでゴールを狙う。自由に持たせたら危険だと学んだディフェンダーがひきつけられれば、逆サイドへのサイドチェンジで一気に攻撃を加速する。
一度ハメスの左足にボールが渡れば何でもできるのだ。特に今のハメスは手が付けられない状態だ。
特に絶品なのがペナルティエリア内から繰り出すふわっとしたクロス。ボールをやさしく救い上げるようにして繰り出すそのキックは非常に柔らかいのだが相手は触れない。対して味方にしてみればとても合わせやすいボールの質だ。このキックができる選手は世界広しといえどハメスが唯一無二なのではないだろうか。
どんなものか知りたければロシアワールドカップのポーランド戦で先制点をアシストした場面をYou Tubeなどで検索してみてほしい。
自由を与えられてこそ輝く
さらに、ハメスの特徴がポジションにとらわれない自由なふるまいだ。基本は前述したような右サイドからのカットインだが、ボールが逆サイドにあるときはピッチを横断して逆サイドにまで顔を出す。ボールが最終ラインで停滞していれば、引いて言ってボールを前進させる。
この自由さを発揮するためには、彼が攻撃の中心となる必要がある。攻撃の全権を任されてこそハメスは輝くのだ。
思えばハメスが輝くときは決まって自分に「王座」が与えられた時だった、ポルトしかりモナコしかり。コロンビア代表もしかりだ。
対して、レアルやバイエルンでは自分と同レベルの「貴公子」たちはたくさんいた。だから彼に王座が与えられることはなかった。だから輝けなかったのだ。
そして、エバートンで彼に再び「王座」が与えられた。だからハメスは再び輝き始めたのだ。アンチェロッティはハメス中心のチームつくりを進めており、すでに周囲との連携は確立されている。
ハメスがボールを持てば抜群のタイミングで後ろからサイドバックのコールマンがフリーランでサポートする。
逆サイドではリシャルリソンが空いてDFラインの裏を狙い、その動きによって空いたスペースにディーニュが侵入してくる。ハメスが左足で対角線のサイドチェンジを入れるプレーはお決まりの形になっている。
さらに、自由に動き回るハメスが明けた右サイドのスペースは、同じく新加入のドゥクレが埋めてくれる。これによってチームはバランスを崩さずに機能している。

自らが輝ける条件を、「王座」を与えてもらえなければ輝けないという点で、ハメスは未熟だと思うかもしれない。たしかに、彼は「王」ではない。「貴公子」だ。
それでも、自分が「王座」に就けば、「王」に仕立て上げてもらいさえすれば、優秀な部下たちを使って素晴らしい国を作り上げるのである。よき王ではないだろうか。

ハメス・ロドリゲスの弱点
最後に、ハメスの弱点を挙げておこう。それは、守備力の低さだ。この弱点がレアルで出場機会を得られなかった主因であることは前述したとおりだ。
守備意識があまり高くないハメスは、逆サイドにボールがあるときに戻り切れずにサイドバックをフリーにしてしまう場面が散見される。
さらに、自分のサイドにボールがある場面ではプレスの拙さが露見してしまう。パスコースを切りながらのプレッシングができていないため、相手との距離を詰めても簡単にパスでの前進を許してしまうのだ。
さらに、自分のポジションを頻繁に留守にするハメスは、そもそも守備に参加できない場面も多い。そんな「浮浪者」ハメスの分まで穴埋めをしているのが、ドゥクレである。彼の献身によって、エバートンではハメスの弱点は幾分覆い隠されている。

あとがき
ハメスを中心としたチーム作りが成功し、絶好調のエバートン。今シーズンは古豪復活の気配が漂っており、ビッグ6を切り崩すかもしれない。
特に目を引くのが公式戦7試合24得点の攻撃力だ。その中心にいるのがハメス・ロドリゲスなのだ。
コロンビアの貴公子は、イングランドの地で着実に「真の王」へと進化しようとしている。今シーズンのプレミアリーグはハメスに注目だ。
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