
【鳥栖のディフェンスリーダー】エドゥアルドのプレースタイルを徹底解剖!
サガン鳥栖が調子を上げている。
コロナウイルスの集団感染が確認されて数週間活動が中断された後の再開後は3試合で負けなしと好調なのだ。今シーズンのサガン鳥栖は得点力不足が指摘されていた。しかしながら、再開後初戦の横浜FC戦で3得点を挙げると、続く浦和戦、柏戦もそれぞれ2得点を挙げており、課題を克服したように見える。
そんな鳥栖の攻撃の起点であり、守備面でも絶対的な支柱として君臨しているのが今シーズンからチームに加わったエドゥアルドだ。
いま鳥栖で最も欠かせないプレイヤーであるエドゥアルド。今回は、彼のプレースタイルについて掘り下げていきたい。
目次
エドゥアルドの経歴
まず最初にエドゥアルドの経歴を簡単にまとめておこうと思う。
エドゥアルドはブラジルのメトロポリターノというクラブでプレーした後、オーストリアのクラブを経て当時J2のガイナーレ鳥取に加入。以後、栃木SC、柏レイソル、川崎フロンターレ、松本山雅とJリーグのクラブを転々とした。

昨シーズンは松本山雅でプレーしたエドゥアルド。過去には柏や川崎などでもプレーした。
そして、今シーズンから松本山雅からサガン鳥栖に移籍すると、瞬く間に最終ラインのリーダーとして君臨。J1全体で見てもトップクラスのパフォーマンスを披露して鳥栖をけん引している。
それでは、そんなエドゥアルドの特徴についてみていこう。
エドゥアルドのプレースタイル
リーチの長さを生かしたクリーンなボール奪取
エドゥアルドの守備能力の高さはもはや疑いようがない。それは彼のプレーをまともに見てきた方ならお分かりいただけると思う。
それでは、エドゥアルドは具体的に何がすごいのか。
まず、リーチの長さを生かしたボール奪取だ。184cmとJリーグの中では長身のエドゥアルドは通常なら届かないだろう場所にあるボールに対しても足を延ばしてからめとることができる。

このように長い足を延ばしてボールをからめとるシーンはもはやおなじみの光景となった。
特筆すべきは、その際にファウルを決して犯さないことだ。エドゥアルドはまったくといっていいほどファウルを犯さない。これはエドゥアルドがディフェンダーとして成熟していることを意味している。
簡単にゴール前でファウルを与えるということは、相手にフリーキックのチャンスを与えるということを意味する。このようなチャンスを与えないことは失点を減らすうえで非常に重要だ。
エドゥアルドは常に冷静で、タックルすべき場面とそうでない場面を常に判断できる。だから無理して飛び込んでファウルを与えることもないし、ボールを奪うチャンスがあればそれを逃すこともないのだ。
俊敏性も兼ね備えるエドゥアルドはリーチの長さを生かしてインターセプトを決める場面もしばしばだ。これは彼の準備力の賜物である。
こまめなポジショニングの修正
そして、この準備力がエドゥアルドの守備面でのもう一つの長所だ。エドゥアルドはこまめなポジショニングの調整を欠かさないのである。
エドゥアルドが相手が放り込んできたボールをことごとく跳ね返すことができるはポジショニングの修正が非常にまめだからであって、恵まれたフィジカルに頼っているわけでは決してない。
エドゥアルドのポジショニングの特徴は、少し低めに構えることだ。
下の図を見てほしい。たいていの場合、相手がいい状態でボールを持つと、エドゥアルドは後退して最終ラインより少し下がり目のポジショニングをとる。
こうすることで裏のスペースをケアできるとともに自分の前にスペースが作るできる。そのスペースに入ってきたボールに対して、パワーを持ってチャレンジし、相手を封殺する。これがエドゥアルドの必勝パターンだ。

下がり目のポジションをとって自分の前にスペース(赤い四角で示したエリア)を作り出し、そこで勝負する。
ラインの後ろにポジションすることは副作用的にいくつかのメリットももたらす。自分がDFラインの最後尾となることでディフェンスラインをコントロールすることができることがひとつ。そして、相方のセンターバックの裏のスペースに抜けてきたボールに対しても相手に先んじて対応することができるのだ。
このように見ていけば、エドゥアルドが冷静でクレバーなディフェンダーであることがわかるだろう。
組み立て能力の高さはJリーグでも1、2を争う
エドゥアルドの守備能力の高さについては、ここまで言及してきた。それでは、エドゥアルドの攻撃性能はどうなのか。
結論から言ってしまうとエドゥアルドは非常に高い攻撃力も併せ持っている。ディフェンダーとしてのテクニックレベルは非常に高水準で、特に組み立て能力は突出して高い。
利き足である左足から繰り出されるパスは非常に正確だ。特にパススピードのある鋭いくさびは彼の最大の持ち味のひとつだ。
パススピードがあるために守る側からしたらわかっていても対応が間に合わない。サガン鳥栖のビルドアップの局面において、エドゥアルドの縦パスからボールを前進させる場面は多い。ボールを大切にする鳥栖のサッカーにおいて、エドゥアルドの組み立て能力は欠かせないものとなっている。
もちろん、ショートパスだけでなくロングパスも正確だ。チームがショートパスを多用するスタイルなのでこれを見せる頻度は高くないが、時折見せるそのロングフィードは鋭く正確に前線の選手に届く。
そして、エドゥアルドはパスの出し手としてだけでなく受け手としても優秀だ。
下の図を見てほしい。エドゥアルドは相手によってパスコースを切られ、隠れてしまったときに前に出ることでパスコースを提供することを得意としている。

13番がもともとエドゥアルドがいたポジション。ここだと、相手の9番によってパスコースが切られてしまっている。このような場面で、エドゥアルドは前に出ることでパスコースを作り出す。この感覚を持つセンターバックはなかなかいない。
このプレーは簡単そうに見えてなかなかできないプレーだ。センターバックの選手は普通、自分の前方からしかプレッシャーを受けない。ところが、前に出ると自分の後方に相手選手を置くことになる。これはセンターバックの選手からしたらふつうは怖いだろう。
しかし、常に冷静なエドゥアルドはものともせずパスをつなぐことができる。これも彼の突出した武器であるといえる。
クリアをパスにできる唯一無二のプレイヤー
そしてもうひとつ、触れないわけにはいかないエドゥアルドの武器がある。それは、クリアをパスにする能力だ。
クリアボールは相手に拾われたり、タッチラインを割って相手ボールになる確率が非常に高い。少なくとも、オープンスペースに落ちて五分五分の競り合いになることが多い。せっかくボールを奪えるチャンスでも簡単にクリアしてしまっては自分たちのボールにすることはできない。
その点、エドゥアルドがいる鳥栖は幸運だ。彼はたいていのディフェンダーが簡単にクリアしてしまうようなボールを正確に味方につなぐことができるのだ。
頭でも足でも、正確にフリーの味方に届ける。あるいは、背後に敵がいないことを確認し、冷静にゴールキーパーへ戻す。これはふつうは怖くてできることではない。
テクニックの高さはもちろんのこと、プレーする前に周囲を確認しているまめさ、そして視野の広さがあってはじめてできることだ。
エドゥアルドのプレーに注目していれば、彼がほとんどの場面で正確に味方にボールをつないでいることがわかるだろう。この能力に関しては、私が知る限りエドゥアルドがJリーグ中で唯一無二の存在だ。
エドゥアルドの数少ない弱点は?
一見完全無欠に見えるエドゥアルドなのだが、果たして彼に弱点はあるのだろうか。
実際ほとんどないのだが、唯一あげるとしたら空中戦の部分だろうか。もちろん身長があって競り合いには強いのだが、落下地点を読み違えてしまう場面はちらほらと散見される。特にボールが高く上がった時にはこの弱点が露見しやすい。
先ほど指摘した後ろに下がるポジション調整は、この弱点を補うものでもあるのではないだろうか。そのままのポジショニングならヘディングで競らなければならないところを、数歩下がることで地上戦に持ち込めるのだ。
エドゥアルドのまめなポジショニングは弱点を補うための試行錯誤の末に獲得したものなのかもしれない。
あとがき
ショートパスを使った丁寧な組み立てとアグレッシブな守備を融合させたモダンなサッカーを展開するサガン鳥栖。なかなか勝てない時期が続いたが、その期間も内容は悪いものではなかった。「あとは点を取るだけ」といった試合が続いていたのだ。
そして、ついにその得点不足問題が解決しつつある。こうなってくると、一気にリーグをかき回しうるのではないだろうか。
魅力的なサッカーで結果を出し、華麗な復活を遂げられるか。そのためには、エドゥアルドの活躍が欠かせないだろう。
関連記事
[…] 【鳥栖のディフェンスリーダー】エドゥアルドのプレースタイルまとめ […]