リモートワークで地方移住が加速? 働き方改革のその先へ

リモートワークで地方移住が加速? 働き方改革のその先へ

2020年7月22日 1 投稿者: マツシタ
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コロナウイルスは、我々の社会を大きく変えた。人と人との接触が避けられるようになり、三密の回避やソーシャルディスタンスなど、いわゆる「ニューノーマル」と呼ばれる新たな社会の枠組みが形成されたのだ。

その一環として急速に普及したのが、リモートワークやテレワークと呼ばれる新たな勤務形態だ。これらの勤務形態は全く新しいものではなく、コロナウイルスが流行する前から存在していた。働き方改革の一環として導入が奨励されていたものだ。しかし、以前はそこまで広く浸透していたわけではなかった。それが、コロナウイルスの流行で人が集まるのをできるだけ避けなければならなくなった影響で一気に普及した格好だ。

こうなってくると、人は場所に縛られない新たな働き方ができるようになってくる。そのことに気づき始めた人がたくさん出てきたのではないだろうか。それでは、リモートワークはどこへ向かうのだろうか。その先には、どのような可能性が広がっているのだろうか。

この話題について示唆に富んだ内容となっているのが、今回の参考図書の『リビングシフト』(柳澤大輔著、KADOKAWA)だ。本書ではどこでも働ける時代が到来することで「東京一極集中」の時代から「地方移住」のトレンドへというパラダイム・シフトがおこり、日本全国の地域が輝きだすという新たな時代の到来を描いている。

今回はこの『リビング・シフト』を参考にしながら、日本社会の未来について考えていこうと思う。




地方という選択肢

 

地方移住へのハードルは確実に下がっている

地方から都会への人の移動が起こる最大の理由それは雇用にあることは明らかだ。しかし、近年の技術の発展や環境の整備により、この問題少しずつ解消されつつある。

地方への移住を促進させうるファクターがふたつある。ひとつは、インターネット技術の発展だ。これに伴い、スマホやパソコンがあれば仕事ができるような環境が整いつつある。それに加えて今回のコロナウイルスの流行によってリモートワークが一気に普及したことは前述の通りだ。離れた場所からでも大都市の大企業に勤務できるようになれば、わざわざ東京に移住する必要性はなくなる。

そして、もうひとつが移動に伴うコストや時間の削減。LCCの広がりによって価格競争が起き、移動に伴うコストは大きく下がってきている。都内へ勤務している人が全員都内に住んでいるわけではない。神奈川や埼玉、千葉など近隣の都道府県から通勤している人も多い。最近では軽井沢や熱海から都内へ通勤してくるような人もいる。リニア中央新幹線が完成すれば、東京と名古屋が40分、東京と大阪が67分で結ばれる。そうなれば、都内へ通勤するにしても住む場所の選択肢はさらに広がるだろう

このように交通インフラの整備もまた、地方移住へのハードルを下げるのに貢献している。

 




 

都市部の優位性の低下

加えて、都市部の優位性が低下しているのもまた、地方移住をブーストする要素となりうる。

都市部の優位性といったら選択肢の豊富さだった。地方には立地していないお店が、地方には売っていないものが、都市部に行けばある。これが都市部の優位性だった。しかし、いまは通信販売でどこにいても何でも手に入る。前述したような都市部の優位性はもはや消えてなくなろうとしている。

むしろ、どこに行っても全国チェーンのお店や郊外型のショッピングモールが立ち並び、どこに行っても同じような街並みがみられるようになってきた。こうなってくると、買い物は都会に行った時だけ楽しめるようなコンテンツではなくなる。

最大のエンターテインメントのコンテンツ、それは自然ではないだろうか。都会にいてはなかなか触れられない自然。我々人間もつい1万年前までは自然で暮らしていた。遺伝子の深いところに、自然に親しむ感覚が刻み込まれていつのだ。

都市部は自然がないうえに人と人が密集しており、窮屈だ。それにもかかわらず、地価をはじめ物価が高い。地方には土地が余っているのに、人々は都市部に集まってきて毎日満員電車に詰め込まれ、パーソナルスペースを冒されながら通勤している。あれ?おかしくない?と気づく人たちが、増えてきているのだ。

どこでも働けるようになれば、地方の自然ととれたての海・山の幸を楽しみながら、都市部の雇用にありついて稼いでいけるようになる地方と都市部のいいとこどりが可能になるのだ。

ワーケーションという言葉を知っているだろうか。ワークとバケーションを組み合わせた言葉で、「旅するように働く」という新しいライフスタイルを指す。訪問先を楽しみ、リフレッシュしながらリモートワークで仕事に参加する。これまでは一生懸命に働いてお金をためてから旅行に行くものだったが、その境界がなくなるのである。働き方改革の先には、そんな夢のようなライフスタイルが待っているのかもしれない。

 




 

地方は復活するのか

 

「人材のシェア」という考え方

これまで、働き方改革の中でも最も浸透していた考え方の一つは、副業の解禁ではないだろうか。これとリモートワーク・地方移住が組み合わされば、地方は大きなメリットを享受できるはずだ。地方にいながら都市部の大企業に勤務する人が、副業として手伝ってくれるかもしれない。地方の企業にしてみれば、これまでに都会に流出していた有能な人材を組み込むチャンスが巡ってくることになるのだ。

近年、カーシェアをはじめとしていろいろなものをみんなでシェアするという考え方が広がりを見せている。上に書いた内容は、「人材のシェアリング」ともいうべき考え方だといえる。この「人材のシェアリング」は、今後人口減少に伴って深刻な労働人口の減少が予測される日本社会にとっては処方箋となりうるのではないだろうか。数の不足を、一人が複数をかけ持つことで埋め合わせていける。今後の日本のことを考えると、真剣に検討すべき議題であるように感じる。

 




 

地方が人を呼び込むためには?

それでは、人を呼び込むために地方が行うべきことにはどのようなことが考えられるだろうか。

それはもちろん、自地域の魅力を発信することだ。都市部と比べて、地方はSNSをはじめインターネットを利用した発信がまだまだ足りていないという印象が強い。情報を多く発信しているところに、情報は集まってくるものだ。

自地域にずっと住んでいると、自地域の魅力とは何なのかがわかりにくいという側面があるのは事実だ。しかし、都会への人の流れができている以上、しっかりとした発信で人々を振り向かせることができなければ地方はしぼんでいく一方だ。早急に取り組んでいくべきだろう。

すぐに移住してもらって直接的に人口を増やすことはハードルが高い。しかし、地方の魅力を発信して実際に足を運んでもらい、気に入ってもらって定期的に来てもらう。そうした「関係人口」を増やしていくことを目指していくべきだろう。その過程で、他地域からやってきた人が、自地域で困っている課題解決を手伝ってくれるようになれば、これまで消費活動だった旅が生産活動に変わる。そうして段階的に地域にかかわってもらいその人口を増やしていくことができれば、地方が活気を取り戻すことは十分可能なはずだ。

 




 

まとめ ~「東京に一番いいものがある」を壊す~

いかがだっただろうか。

これまでの日本の発展は、昭和の高度成長期のやり方を踏襲してきた。そこではセンターにいることが重要で、いい大学に入って大手企業に就職して結婚してマイホームを持って…。「成功」はかなりの部分レールとして決められていて、その上を走ることが求められた。

しかし、日本は人口が減少局面に入って社会は高齢化が進んでいる。働き手が豊富で高齢者が少なかった高度成長期とは根本的に人口構成が変わった今、社会の仕組みも変化させなければならないだろう。新しい社会では、レールの上を走るのではなく、自分の物語を生きることになるはずだ。そうなれば、人々の選択肢は多様化していく。

これからは「東京に一番いいものがある」という現状を壊す必要があるのではなかろうか。東京への一極集中は明らかに行き過ぎている。あんなに狭い地域に日本の人口の10分の1以上が集まって住むことに意味はあるのだろうか。すこしずついろいろなものを日本中に分散させ、それに特化した地域の強固なコミュニティを気づき上げるのだ。

これを『リビング・シフト』では「まちのテーマパーク化」と呼んでいる。ディズニーといえば浦安、避暑といえば軽井沢、スキーといえば白馬というような「〇〇といえば××」というようなまちを日本全国に作り上げていくのだ。前述した「どこでも同じ風景からの脱却である。

これが実現できれば、人口減少・高齢化と都会への流出で苦しむ地方は復活し、日本全体が活気を取り戻すことができるのではないだろうか。

 

 

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