~新技術のリアルに迫る~『5Gの衝撃』から考察

~新技術のリアルに迫る~『5Gの衝撃』から考察

2020年6月5日 0 投稿者: マツシタ
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新しい技術が登場してきたときには、いつも漠然とした不安を抱くものだ。AIが人々の仕事を根こそぎ奪ってしまうだとか、シンギュラリティによって人工知能が人間よりも賢くなって支配されてしまうだとか、都市伝説的なことがまことしやかにささやかれたりする。

しかし、その新技術に何が出来て、何ができないのかをしっかり調べている人は少ないと思う。よく分からないまま漠然とした不安に駆られているだけなのではないだろうか。新しい技術が出てきたら、いったんその技術を客観的に見て、どういうものなのかを調べることが重要なのではないだろうか

しかも、これから新しい技術はどんどん出てくると予想されている。5Gもその一つだ。

今回は、5Gとはいったい何なのか、5Gによって何が変わるのか、5Gによって何ができるようになるのかといったことに焦点を当ててみたい。

そのために、小林雄一氏の『5Gの衝撃』(宝島社)の力を借りた。

 

 

5Gで何が変わる?

5Gは、次世代型のモバイル通信技術を指す。現在われわれが使用しているスマホの多くは4G(第4世代)と呼ばれる通信技術を使用しています。その次世代だから5G(第5世代)というわけだ。

では、5Gはこれまでと比べて何が優れているのか。その特徴は3つある。「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」だ。ひとつずつ簡単に見てみよう。

「超高速」は具体的な数字を見たほうがその威力がわかるだろう。4Gでは6~7分かかっていた2時間程度の映画のダウンロードは、5Gではわずか1、2秒で可能になる。桁違いの速度だ。時間あたりに伝送できるデータ量が劇的に増えることで、映画のような大容量なコンテンツも高速で処理できるようになるのだ。

「超低遅延」とは、通信ネットワークの反応時間が非常に早くなることを指す。超高速通信と混同しがちだが、オンラインゲームなどでボタンを入力したときに、実際にその操作が反映されるまでの時間と考えればわかりやすいだろう。5Gにおける反応時間は、4Gの10分の1といわれている

「多数同時接続」とは、通信ネットワークに接続できる端末の数が非常に多くなることを指す。基本的に、ネットワークに接続する端末の数が多くなりすぎると、通信ネットワークが混雑しすぎて端末が接続できなくなってしまう(これを輻輳という)。これが解消されることでどのような恩恵があるかは後述する。

 

 

3Gは音楽、4Gは動画、5Gは?

これまで、通信ネットワークは1Gから順に、2G、3G、そして4Gへと進化してきた。そして、それぞれの世代には「キラーアプリ」が存在した。通信ネットワークの機能向上の恩恵を受けて、伸びたサービスがあったのだ

3Gでは音楽ダウンロード配信であった。それまではウォークマンなどの携帯型音楽プレイヤーにCDなどから音楽をダウンロードするというアナログな方式によって音楽は消費者のもとに届いていた。しかし、3Gの登場とそれに伴う音楽ストリーミングサービスの拡大に伴い、音楽のダウンロードは全てデジタルで完結するようになったのだ。

4Gのキラーアプリは動画のストリーミング配信であった。音楽よりも容量が大きい動画についても不自由なく配信が可能になったことでYou Tubeなどの動画配信サービスが拡大。You Tuberという新しい職業の登場も、4Gの恩恵の一つだと見ることもできるだろう。

それでは、5Gのキラーアプリは何なのだろうか。一説によると、それはオンラインゲームなのではないかと言われている。これまでも、オンライン対戦ゲームは存在していた。スマホでもオンライン対戦型のゲームは楽しむことが出来たが、あくまで簡易なものだった。複雑なアクションを伴い、壮麗なグラフィックを搭載した本格的なものは、ゲーム専用機を用いていた。

それが、5Gが導入されることでスマホでも可能になるというのだ。本格的な対戦型RPGやFPSなどのゲームが、「超低遅延」の5G環境によってスマホでもストレスなくプレイできるようになるという。

もしヘビーユーザー向けの本格的なゲームもスマホで遊べるようになった場合、ゲーム専用機が淘汰されていくことになるかもしれない。そうなると、ゲーム業界は大きく再編が進んでいくことになるだろう。

 

 

5Gはで恩恵を受けるのは消費者ではなくむしろ…

これまで見てきたように、各通信世代には「消費者向け」のキラーアプリが存在してきた。しかし、4Gの時点で日常生活において利用する分にはすでに十分なレベルに到達してしまっている。今から通信速度が10倍になったところで、大きな変化は感じられないだろう。動画視聴も4Gですでに事足りる。本格的なゲームの登場で恩恵を受けるのは、一部のヘビーユーザーだけだ。音楽や動画視聴といった、ほぼすべての人の生活に影響を与えた3G、4Gの変化と比べると規模は小さいだろう。

実は、5Gの登場によって恩恵を受けるのは、消費者ではなく、むしろ製造者側だといわれている。端末の向こう側の世界でこそ、5Gの威力が発揮される。

より具体的に言うと、5Gは、IoTをもたらす基盤技術だと言われているのだ。IoTとは、全てのものがインターネットに接続されることによってもの同士が通信し、より便利な社会を実現する新技術を指す。たとえば、冷蔵庫の中の食材がなくなったことを冷蔵庫が感知してスマホに通知を表示してくれる、

そのために欠かせないのが「多数同時接続」というわけだ。この基礎技術が無ければ、非常に多くのものをインターネットに接続することはできない。

 

 

自動運転にも5Gは必須

そして、IoTの延長にあるのが、自動車の完全自動運転だ。

恐らく多くの人が勘違いをしていることだと思われるが、完全自動運転になっても、運転の中枢機能は回線の有無によらずどんな状況でも自立制御できるような形になる。よく山奥で電波が届かなくなってスマホが圏外になることがあると思う。この現象はどれだけ通信世代がグレードアップしていってもそれとは関係なく起こる。電波が届かなくなる地域は必ず出てきてしまうのだ。

もしそうなった場合に運転を完全に通信技術に頼っていると、山奥で通信が切れた自動運転車が制御不能になって崖から飛び降りてしまうだろう。だから、通信に頼らずとも車を制御できるシステムを車に搭載しておかなければならないのだ。

それでは、5Gは自動運転にどのような形でかかわるのか。それは、自動運転車同士の通信だ。自動運転車は、互いに通信しながら最適な走行ルートを決定していくと考えられている。お互いの位置情報は交差点の通行で必須だ。それだけでなく、事故情報や渋滞情報なども互いに通信し、より最適なルートで目的地へ向かうのである。

 

いかがだっただろうか。我々スマホの利用者が求めるスペックは4Gであらかた満たしていると言えそうだ。5Gはむしろ、他の次世代技術を生み出し、それと組み合わさることで威力を発揮するテクノロジーだと言えるだろう。

また、5Gという次世代通信技術を巡って米中が覇権争いを展開していること、IoTの導入とプライバシーの問題など、5Gを取り巻く環境はその技術だけを理解しただけでは語れない部分がある。ここについても、『5Gの衝撃』では掘り下げて語られている。興味がわいたという人は本書を実際に手にとって読んでみてほしい。

それでは今日はここらへんで失礼します。