
パトリックのプレースタイルまとめ ~日本代表の秘密兵器となれるか?~
パトリックでおなじみアンデルソン・パトリック・アグウイアル・オリベイラはガンバ大阪に所属するブラジル国籍のFWだ。
彼はブラジル国籍ながら、日本への帰化・日本代表としてのプレーの希望を公言しており、TwitterなどSNSを通じて日本語を学ぶ姿を積極的に発信している。
今回はそんな彼がもし日本への帰化を実現し、日本代表に召集されることになったら、という視点とからめて彼のプレースタイルについてみていこうと思う。
目次
パトリックのプレースタイル
最大の武器は圧巻のフィジカル
昨シーズンのパトリックは広島で出番を失ってしまい、古巣であったガンバ移籍復帰後も思うようなプレー機会を得るまでには至らなかった。しかし、その前の2018シーズンには広島の絶対的エースとして君臨し、20ゴールを挙げて得点ランキングの2位にランクインするなど、サンフレッチェ広島の2位フィニッシュに特大の貢献を果たした。今回はこのシーズンのパトリックのプレーから分析していく。

広島時代のパトリック
パトリックの最大のストロングポイントは、日本人離れしたフィジカル能力にある。189cm、82kgの恵まれた体格は一目見るだけで驚異を感じるものだ。
18年シーズンの広島はリトリートして堅固な守備ブロックを敷き、ボールを奪えばロングカウンターを仕掛ける堅守速攻スタイルを志向していた。その攻撃の最初の基準点となるのがパトリックだった。圧倒的なフィジカルで対峙するディフェンダーをねじ伏せ、多少雑なロングボールでも納めてしまっていた。
しかし、彼のもっとも得意とするプレーはこのポストプレーではない。大柄なパトリックだが標準以上のスピードを持っている。これを活かした強引な縦への突破、および裏への抜けだしが彼が最も得意とするプレーだ。
戦術との相乗効果も大きかった
このプレーを発揮するうえで広島の堅守速攻の戦い方は、彼のもっとも得意とするプレーを引き出すうえで相性が良かった。広島が自陣に構えて相手を敵陣から引き出すことにより、パトリックが使うためのスペースを相手DFラインの裏に作り出すからだ。
広島はボールを奪ったらまずパトリックめがけてロングボールを蹴ることが少なくなかった。パトリックはこれを収めて攻撃の起点となるだけでなく、そのままゴールめがけて突進して一人でゴールを奪ってしまえる圧倒的な個人能力の持ち主だ。スピードとフィジカルを高次元で兼備するパトリックは重戦車そのものだ。いったん前を向いて進攻を始めれば、DFが一人で彼を止めることはほぼ不可能だ。
裏への飛び出しという面では、パスの出し手が重要となる。この点、広島は完璧だった。青山というリーグ屈指のスルーパスの名手が中盤に君臨していたのだ。パトリックはCBとSBの中間にポジションをとって待っていることが多かった。このあいまいなポジションをとることでDFにマークされない状態で青山のスルーパスを受けることができた。このホットラインから築かれた決定機は数知れない。
空中戦の強さは規格外
では、広島がボールを支配し、速攻ではなく遅攻に移行した場面ではパトリックはどのようにふるまったのだろうか。
広島がボール保持を確立ると、パトリックは組み立てには関与せず、ゴール前に陣取る。これは広島が柏好文というリーグを代表するサイドアタッカーを要し、攻撃をサイドから組み立てていたのとも関係があるようにも感じる。しかし、相手守備陣の前や隙間で細かい連携での崩しの一端を担うプレーをパトリックが得意としているようには見えないのもまた事実だ。
このようなプレーよりもむしろ、ゴール前で持ち前のフィジカルの強さを発揮するようなプレーでこそパトリックは生きる。つまるところ、クロスボールに合わせるヘディングシュートだ。2018シーズンで上げた20ゴールのうち、実に8ゴールが頭で決めたものだった。空中戦の強さは圧倒的で、Jリーグ内では無双状態。ほぼ負けることはないレベルだった。
サイドからの崩しはチームメイトに任せ、中央でクロスボールを待っていたのは当然のふるまいだろう。
このように、フィジカルの強さを前面に押し出し、相手DFを力でねじ伏せるようなプレースタイルが彼を特徴づけているといえる。
パトリックが日本代表に召集されたら
大迫の完全な代役は適任ではない
それでは、ここからはパトリックが日本代表に召集された場合にどのような起用法が考えられるかを考えていこう。
日本代表は絶対的なセンターフォワードとして君臨する大迫の代役不在が積年の課題となっている。パトリックは、この課題を解決する切り札として期待されているわけだ。
しかし、前述の通り、パトリックのプレースタイルはフィジカルを基盤とするものである。大迫の柔らかいキープで攻撃の起点となりつつ南野、中島らとの連携で2列目のアタッカーを活かすプレーは、パトリックの得意なプレーではない。
よって、パトリックを代表に組み込む場合、大迫が入る場合とは違った構造の構築が必要だろう。
強力なジョーカーになりうる
日本代表はアジアの舞台で戦う場合、相手が引いてブロックを形成してくることが多い。これを崩せずに苦しむという試合も散見される。
このような試合で、例えば途中交代でパトリックを投入すれば、停滞感を打破する切り札になりうる。パトリックの空中戦の強さは圧倒的で、大迫もはるかにしのぐと思われる。この空中戦の強さは大迫の控えとして召集されていた永井にも欠けている要素であり、パトリックは十分にここを補いうる。
残り時間が少なくなりどうしても得点が欲しい場面で、パトリックめがけてクロスを送り込むというのは大きなオプションとなりうるのではないだろうか。
また欧州や南米の強豪国と対戦する場合、パトリックはよりその良さを生かすだろう。前述の通り相手にボールを支配される試合でのカウンター時にパトリックは持ち味を発揮する。多少雑なボールも収めてくれるだけでなく、前を向いて一人で打開することも可能だ。相手を押し返すという側面において、パトリックは大きな貢献を果たしうる。
彼にボールを供給するパサーの面でも、日本にはロングパスの名手柴崎がいる。青山と築いたようなホットラインを柴崎とも構築できれば、パトリックの良さはより生かされるのではないか。
パトリックは現在32歳で、カタールワールドカップ開催時には34歳になっている。彼の最大の長所がフィジカルであることを考えると、ワールドカップ時にパトリックが広島時代に見せたレベルのパフォーマンスを発揮できるかわからないという懸念材料はある。
しかし、これまでに述べてきた通りパトリックは純日本人選手からはなかなか得られないものをもたらしうる。パトリックの日本帰化が実現すれば、招集してみる価値は十分にあるのではないだろうか。
それでは今日はここらへんで失礼します。