【J1王者】2020年シーズンの横浜Fマリノスの戦術振り返り

【J1王者】2020年シーズンの横浜Fマリノスの戦術振り返り

2019年12月7日 1 投稿者: マツシタ
Pocket

走るポゼッションフットボール。今季のマリノスを端的に表した一言だと思う。

7連勝、11試合負けなし。終盤に怒涛の追い上げを見せて15年ぶりの優勝、古豪復権を印象づけたマリノス。その戦術を振り返りつつ、来季に向けたチーム作りについて見ていこうと思う。

マリノスの今季の戦術

まずは、マリノスの今季の基本フォーメーションをご覧いただきたい。

夏に三好康児と天野純が抜け、マテウスとエリキが加入してからはこの形で固まった。

チームのコンセプトはとにかく相手にボールを持たせず、自分たちがボールを握って試合を進めることだろう。今シーズンのデータを見ると、J1全18チーム中で支配率はトップだ。そのスタイルから非常に攻撃的なサッカーととらえているサポーターも多いだろう。事実、今シーズンの総得点数は断トツのリーグ1位。仲川輝人とマルコス・ジュニオールの2人が並んで15得点を挙げ、ともに得点王となった事実が物語る。

高い支配率、高い攻撃力。こう聞くと、昨季のJリーグ王者、川崎フロンターレを思い浮かべる人も多いのではないかと思う。しかし、横浜と川崎のサッカーには決定的な差がある。全く異なるスタイルだと言ってもいい。

 

川崎との決定的な違いとは?

そのスタイルの決定的な差は、走行距離のデータを見ればわかる。川崎が全チーム中で2番目に平均走行距離が短い(最も短いのは同じくポゼッションサッカーを志向するヴィッセル神戸)のに対し、横浜は最も走行距離が長いのだ。

川崎はのサッカーでは、自分たちは走らない。できるだけボールロストを少なくして、ボールを走らせる。そうして相手も走らせて生まれた隙を華麗なコンビネーションで崩していくのだ。

一方の横浜。リーグで最も高い支配率を記録しながらリーグで最も走行距離が長いのはなぜなのか。実は、横浜はポゼッションを第一の選択肢としていない。まず狙っている攻撃の形は速攻なのだ。

横浜の試合を見ていれば、ゴールキックやセットプレーの再開が異常に速いのがわかると思う。Jリーグでは、ヨーロッパと比べてもこれらのインターバルでゆっくりとする傾向がある。そのため、プレーが途切れたときの切り替えは遅いのだ。唯一、マリノスは違う。ゴールキックも、セットプレーも、再開がとにかく早い。チーム全体がカウンターの準備を常にしていて、後ろの準備ができたら前線の選手たちはすぐさま裏のスペースへと走り出す。そして後ろの選手たちもそれを常に狙っている。これが非常に徹底されているのだ。

前線のエリキ、マルコス・ジュニオール、マテウス、仲川に控えの遠藤、エジガル・ジュニオまで含めて、マリノスの前線の選手たちはとにかく速い。ただでさえ速い選手たちが常に裏を狙っているのだからこれほど怖いものはない。チームとしてやりたいっサッカーに適合する選手をしっかりと獲得してきた結果だろう。

 

走行距離のなぞを解くカギはハイプレスにあり

このカウンター最重視の戦い方も走行距離増加の一因であるのはお判りいただけただろう。しかし、それだけではリーグ1位にはならない。彼らは速攻を志向して自陣に引いているわけではない。ピッチの全域でハイプレスを敢行するのだ。対戦相手は、自陣深い位置でもゆっくりとボールを持ちことは許されない。ピッチのどの位置でも、どの時間帯でも、マリノスのプレッシャーがやむことはない。相手から一秒でも早くボールを奪い返そうという強い意志が感じられる。y

そして、これを遂行するために、マリノスは異常なハイラインを敷く。陣形をコンパクトにして、スペースを消し、相手を素早く囲い込むためだ。そのDFラインの高さはハーフウェイラインに乗るような勢いだ。ふつうここまで高いラインを敷くと裏の広大なスペースを使われてカウンターを食らってしまうが。マリノスはそうなっていない。

まず、前線の選手たちの快速がこのハイプレスでも活かされている。異常なまでのプレスの速さでボールホルダーに正確なロングボールを蹴ることを許さないのだ。そして、万一ボールをDFラインの裏に落とされても、超速センターバックのチアゴ・マルチンスと異常なまでの守備範囲を誇る朴一圭がカバーしてしまう。この戦術に合致した選手を、守備ラインにもそろえているのだ。

この徹底されたハイプレスが、川崎との最大の違いなのだ。いや、その他すべてのチームから一線を画す、マリノスのアイデンティティーだと言っていい。ヨーロッパで言うと、昨季のチャンピオンズリーグで大躍進を果たしたアヤックスに似ていると言えばわかりやすいだろうか。

攻撃の第一選択肢として前線の快速アタッカーたちを活かしたカウンターを仕掛ける、そしてボールを失ったらどこまでもボールホルダーを追いかけまわしてボールをすぐさま奪い返す。これを非常に高い完成度をもって行っているのがマリノスなのだ。これによって走行距離1位であり、ボール支配率1位というスタッツが残された。

 

ポジショナルプレーによるポゼッションの完成度も高い

ここまでに述べたように、マリノスの攻撃の第一の選択肢は速攻だ。しかし、それだけのチームではない。リーグ1位のポゼッションを誇るだけあり、ポゼッションからの攻撃の完成度も高い。

マリノスのポゼッションの局面は、ポジショナルプレーによる攻撃を採用している。左サイドでのリサイクル旋回、サイドバックが中に絞る偽サイドバックなど、最先端の戦術を積極的に取り入れてスムーズにボールを前線に運ぶことに成功している。これらの最先端戦術は、ほかのJリーグチームでは見られないため、相手チームを大いに混乱させていた。

先ほどマリノスの前線は速いといったが、彼らはただ速いだけではなく、水準以上のテクニックも持ち合わせている。細かいパスをつなぎながら崩していくプレーにもしっかりと適応できるクオリティーを持っている。彼らはフィジカル面では十分ではないが、その弱みが出ないようクロスは低くて速いボールを徹底するなどウィークポイントを補い、ストロングポイントで勝負できる戦術構成も素晴らしいところだ

また、偽サイドバックの採用は相手を押し込んで空いたバイタルエリアに侵入したティーラトンの左足ミドルを活かすという副次効果も生まれ、大きな得点パターンにった。

 

フロントを含めた総合力でつかみ取った優勝

今季のマリノスの優勝において、フロントの補強の的確さおいてにも触れておかなくてはならない。モダンなポゼッション+ハイプレスを志向するポステコグルー監督の戦術にマッチした選手を的確に獲得し、チームの底上げに成功してきた。三好、天野が抜けた穴をエリキ、マテウスを獲得して埋めて戦力収支でむしろプラスとしたのが象徴的だ。

彼ら以外にも、エジガル・ジュニオ、マルコス・ジュニオール、ティーラトン、朴一圭は今季からの新戦力で、畠中とチアゴ・マルチンスのセンターバックコンビは昨季の途中に加入した選手だ。つまり、優勝メンバーの主力のうち半数以上が1年半以内に獲得した選手だということだ。

国外からの補強はもちろん、J2から畠中、J3から朴を補強するなどスカウト網の広さとともにスカウティング陣の力が光る結果といえるだろう。

また、昨季不安定な戦いに終始し12位に終わったにもかかわらずポステコグルー監督に信頼を置いて継続路線を選択し、その戦術にあった選手を獲得したフロントの一貫性も素晴らしい。目指しいていく方向性を明確に持ってフロントが力強くチームを先導した賜物といえるだろう。まさに総力戦でつかみ取った、クラブとしての優勝だ

 

そのフロントは、すでにポステコグルー監督の続投を発表。来期も継続路線を歩む中で、移籍市場でどのような立ち回りを見せるのかも注目だ。

そのマリノスの移籍市場についての考察記事も書いたので、今回の戦術分析を頭の片隅に置きながら覗いてみていただきたいと思います。

https://bun-bu.com/2019/12/11/marinosiseki2020/

それでは今日はここらへんで失礼します。